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"To kill a mockingbird" (1960) Harper Lee

\"To kill a mockingbird\" (1960) Harper Lee_e0052044_12335673.jpg英米文学を専攻した人達なら知っている小説なのかもしれない。映画化もされている(邦題名:『アラバマ物語』)。どうやらこちらでは推薦図書になっているようで、本屋さんにはたくさん並んでいた。
舞台は1930年代のアラバマのとある町。物語は主人公で語り手のScoutが8才の夏からハロウィンにかけて起きた出来事を6才にさかのぼって語るところから始まる。4才年上の兄Jem、友達のDill、白人の女の子をレイプしたかどで逮捕された黒人を弁護する事になる父親のAtticus、お手伝いの黒人女性、家にこもって絶対に人前に出て来ないBooや、町の人達がScoutの描写を通してそれぞれ当時の南部の雰囲気を醸し出している。
リンカーンが1862年に奴隷解放宣言をしたとは言え、1930年代でもまだ黒人差別は続いている(公民権運動のきっかけになったアラバマのローザ・パークス逮捕により起きたボイコット事件も1955年を待たなければならない)なかでのAtticusの法廷でのシーンは息つく暇がなく、またその後に続く事件も最後まではらはらさせられる(裁判の結果は…読んでみてください)。
信念を持って黒人を弁護するAtticusに、作者の人種差別にたいする思いが込められている。
普段の生活ではあまり感じられない、こうであったらいいな、と思う"Core American Value"がAtticusを通して描かれている。また、人種差別だけでなく、子供時代だから感じる切ない気持ちも描かれていてぐっとくる。なぜこのタイトルなのかも終わりの方で分かるようになっている。
作者のHarper Leeは実はTruman Garcia Capoteの幼なじみで、昨年公開された"Capote"にも出ている。作中のDillのモデルはCapoteだったそうだ。他の作品も読んでみたいと思ったのだが、彼女の作品はこれ1作しかない。
英語そのものは子供の視点なので多分それほど難しくはないはずなのだけれど、アメリカ南部の言葉遣いや省略形がたくさんあって苦戦した。でも読んでとっても良かったなと思う。

追記(2006年6月13日):日曜日の書評を見ていたら、Harper Leeについての本(Mockingbird A Portrait of Harper Lee, Charles J. Shields & Henry Holt)が載っていた。
by lerot11 | 2006-06-13 13:16 | 読書メモ