日々これ好日

"Interpreter of Maladies" Jhumpa Lahiri

e0052044_10425492.jpg2000年のピューリッツァー賞をとったイギリス生まれでニューヨーク在住のインド系アメリカ人、ジュンパ・ラヒリの短編集。邦訳は『停電の夜に』というタイトル。
インドが舞台のものもあればアメリカにいるインドからの移民が主人公のものもある。語り手も登場人物(女性や男性)だったり、第3者だったり、描写も無駄なくとても巧みな構造になっている感じがする。
全部で9本の短編はどれもとても好きなのだけれど、一番好きなのはタイトルになっている"A Temporary Matter"(停電の夜に)。子供が死産だったことからお互いを避けるようになってしまったアメリカに住むインド人の夫婦が、突然の停電で数日間一緒に時間を過ごさなくてはならなくなる。停電中の食事の間に、今まで話した事のないことをお互い告白することになる。この出来事の間に過去の出来事が語られる。最後に夫が語る”秘密”はとてもせつない。他にも"The Third and Final Continent"に出てくる下宿屋さんのおばあさんがとても良い。これもまた切ない物語。一番どきっとしたのは”Mrs. Sen's"。アメリカに住み始めて間もないインド人の奥さん(Mrs.Sen)が自宅でアメリカ人の男の子のベビーシッターをする。その少年が語り手。Mrs.Senは車の運転ができない。料理の材料を買いに行くのも夫に頼んでいたのだが、夫も仕事の都合でできなくなる。そのことでけんかになり泣いたり、バスで買い物に行くのだけれど、そこで不快な出来事が起きたり、最後は車を運転してとうとう事故を起こしてしまう。新しい土地や文化になじめない外国人の切なさが伝わって来た。
ほとんどの短編にスパイスなどの香りの描写があって、濃厚な香りが漂ってきそうな本だった。
本の最初のページに書評の引用がいくつか載っているのだけれど、そのなかにMichiko Kakutaniを発見。彼女はN.Y. Timesの書評家で、"Sex and the City"の中でキャリーが恐れている人物。最初に聞いた時は架空の人物かと思ったのだけれど実在の人物で辛口の批評で有名らしい。
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by lerot11 | 2006-09-02 10:44 | 読書メモ